つくばいと茶室
もともとつくばいとは、茶室の入口などに設けてある低い手水鉢のことをさしているのです。塵ひとつ落ちていないような美しい庭園に差し込む冴えた月の光がつくばいに差したり、よどみの無いりんとした空気がつくばいには似合います。一抹の物寂しさ、侘び寂びの世界につくばいは生きています。まぎれもない日本の風景がそこにあるといっていいでしょう。日本庭園にいけば、そこには、必ずといっていいほどつくばいが配してあるでしょう。つくばいとは、手水鉢を中心に意味のある石で囲まれた全体のことをそう呼びます。
つくばって手や口を清めることからその名がつきました。仮に茶室が単独でポツンと建てられていたら殺風景なものであるのではないでしょうか。そうです、茶室に至るまでの空間の演出が大切であるのです。客がいきなり茶室に通されることはなく、まず寄り付きや座敷などへ案内されると思います。そして、庭へ出て小さな門をくぐるでしょう。これからの茶室までの通り道は、飛び石を配した露地となっていて亭主の心遣いにより打ち水が打たれているでしょう。途中の待合に腰掛があり、ここでしばらく待つのです。そして、迎えでた亭主の合図に従い客は茶室へと向かうのです。
そして、やっと、茶室の前につくばいがあり、ここで手水を使うというわけです。茶室には、にじり口という小さな入口から、頭をかがめて体を入れます。にじり口に入ってまず目に入るのが床の間です。墨蹟窓からの光に照らされた床には、四季に合わせた掛け軸、花があしらわれていると思います。通常床前が上座であり正客席となります。夏には風炉が置かれ、冬には炉が切られ、そこが亭主の座る手前座となるのです。手前のための明り取りとして風炉先には下地窓が開けられています。客が着座すると亭主が勝手口から出てきて挨拶をし茶事が始まるといったシナリオです。
天井は低く、窓からの光も必要最小限に絞られて、主客ともに茶事に集中するでしょう。懐石を戴いた後一旦露地に退出するのですが、また茶室に戻り、まず濃茶を一同回し飲み、ついで薄茶を味わった後、客はこの一期一会の場から静かに退出すると言う流れです。にじり口には頭を下げなければ入れないので、貴人を迎える場合のため、にじり口とは別に貴人口を設けることも多いようです。給仕のために勝手口とは別に給仕口をもうける事もあるようです。とにかくつくばいとは、このような茶道の一連の流れの中に欠かせないものであるのです。


