つくばいに似た感覚
どこか、お寺などに行くと、茶庭などに据える手水鉢が置いてあります。つくばって使うように鉢を低く構えてあるのです。左右に湯桶や灯火を置く湯桶石や、手燭石を配し、使い手の乗る前石を据えるのが定式となっているようです。さらにつくばいは、茶室では心身の塵を払うものとして重視されているのです。さらに、つくばいは、その据え方により立ち使いの形式もあるようです。つくばいとは、もともと茶道の習わしによりお客様が這いつくばるように身を低くして手をきよめたことが始まりというわけなのです。
このつくばいに似た感覚のもので、水琴屈という仕掛けがあります。すいきんくつと読みます。こちらも、つくばいと同じようにして、日本庭園の技法のひとつといっていいでしょう。洞窟内に水滴を落としたとき発生する反響音を庭園内で楽しむものであります。一般に手水鉢の下の地中に甕などを埋め込み、手水後の排水に音を生ませる形をとるといった仕掛けです。さらに、洞水門(どうすいもん)というものがあります。添水、懸け樋などで水を引いて竹筒に注ぎ入れ、一杯になると重みで反転して水を吐き、元に戻るときに石などを打って音を発するようにした仕掛けです。
もと農家で猪(いのしし)や鹿(しか)をおどすのに用いられたために、ししおどしといわれるのが一般的です。こちらは、静寂をやぶり、コーンと快い音を響かせる特徴があります。ししおどしのその味わいのある音と動きは、風雅な日本庭園によくなじんで、見るものの心を静めてくれると言う意味では、つくばいに似た感覚であると言っていいでしょう。和風庭園の景物として親しまれてきたものでありますが、その名称からもうかがえるように、もともとは田畑を荒らす鳥獣を追い払う農具のひとつであったといいます。支点で支えた竹筒に水を引き入れ、たまる水の重みで竹筒が頭を下げて水を吐き出すと、元に戻る力で勢いよく下の石を打つのです。
その音で、鹿や猪を寄せつけないようにするという仕掛けだったのです。つくばいにもいろいろな種類があるように、ししおどしにもいろいろなスタイルがあるようです。鹿おどしの竹についてですが、本物の竹と樹脂の竹などがあるようです。部屋用つくばいなどは、樹脂の竹が多いようです。樹脂の竹は、重さやバランスを確保するのに便利なのです。しかし、本物ではないので、高級感は無いでしょう。本物の竹の場合、バランスをとるのが難しいといえます。しかし、竹本来の質感は、何物にも替えがたいのではないでしょうか。また、竹筒が岩に当たる音は、本物ならではであるようです。このような日本庭園に欠かせないつつばいと良く似た感覚のものがあるのです。


